最近になりやっと患者さんたちが治療を受けようと思ってくれるようになった病態です。皆さんが一人で悩んでいるよりも多くの女性で見られる症状です。訓練や投薬などの保存的な治療でも治る方が多い事を知っておいてください。
尿失禁は、「腹圧性尿失禁」、「切迫性尿失禁」、「混合性尿失禁」に分類されます。
主に中年女性に多く見られる病態です。くしゃみ、咳(せき)、重いものを持ったとき、大笑いをしたときなど、おなかに力がかかった時に尿が漏れてしまうものです。頻尿や排尿切迫感は有りません。この原因は、膀胱を支える骨盤底の筋肉が緩むことや尿道括約筋の力が弱まることです。軽症であれば、骨盤底筋体操や薬物療法が考慮されます。重症例あるいは尿漏れによる苦痛が強い場合には手術療法が適応となります。膣と下腹部を小切開して、尿道をテープで支えるTVT手術が一般的です。
尿意を感じると、すぐにトイレに行かなければ尿をがまんできずに漏らしてしまうという病態です。膀胱容量が減少してしまっている状態です。過活動膀胱や慢性膀胱炎、神経因性膀胱(脳卒中・脊椎疾患・下腹部手術後等で膀胱へ行く神経が障害された状態です)などにて起こる症状です。薬物療法が治療の主体となります。
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が混在する病態です。正直なところ、治療に難渋する病態です。
この症状で悩んでいる女性が多いために、患者さんへの情報提供ホームページが幾つかあります。
・大鵬薬品 - 頻尿.jp
・アステラス製薬 - 排尿トラブル改善.com
上記のように、治療法は骨盤底筋体操・内服治療・手術に分けられます。特に、骨盤底筋体操は全く無害ですし、まず基本となる治療です。
しかし、殆どの方は正しく”骨盤底筋体操”が出来ていません。指導書には、よく「肛門や尿道・膣だけを5秒間強くしめ、次いでゆっくり緩めます」の様に書かれています。実際に患者さんにやってもらうと、ほぼ全員が下腹部や足~臀部に余分な力が入ってしまっているのです。その原因は、「5秒間」という記載だと思います。初心者はぐーっと余分な所に力を入れてしまうのです。
具体的にどうすれば良いでしょうか?最初のうちは、時間を掛ける意識ではなくて、肛門だけをピクピクさせるように収縮させる動きだけで十分だと思います。そうやって、どういう感じに力を入れれば良いのかが習得できてから、何秒間か続けて肛門を閉めてみるようにすれば習得できます。
「尿意切迫感をゆうし、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁は伴なう事もあれば伴わない事もある状態」とされています。実際は「オシッコが近くて我慢しきれない」という症状で来院する事が多いです。過活動膀胱以外にも似たような症状を呈する病気はいろいろありますので専門医の受診が望ましいと思います。
膀胱が過敏になっている訳ですから、抗コリン剤やβ3アドレナリン受容体作動薬などの投薬で膀胱を鈍感にして蓄尿できるようにします。抗コリン剤が治療の主体となりますが、緑内障の方は禁忌で使えません。また、便秘や口渇などの副作用が強く出る場合もあります。
過活動膀胱の患者さんに限りませんが、頻尿などの膀胱刺激症状の強い患者さんでは、冷え対策、刺激物の摂取制限、便秘対策は重要と考えています。
女性の多くが一回はかかったことが有ると思われる非常に多い病気です。”残尿感がある”、”オシッコをすると痛い”、”オシッコの回数がすごく多くなった”などの症状がおきます。
性的活動期の女性に頻度が多いため、殆どの患者さんが1~3日間の抗生剤内服で軽快します。ただし、市販の抗生剤を内服してこじらせてしまう患者さんもいますし、急性腎盂腎炎を併発してしまい入院治療が必要となる患者さんもいますので、簡単に考えない方がいい場合が有ります。症状が治まっても膀胱内面は傷んでいることが多いので専門医の治療が望ましいと思います。
閉経期前後の女性の場合には、ホルモン環境の変化によって慢性化しやすい印象が有ります。やはり、専門医の治療が望ましいと思います。
急性膀胱炎を繰り返す場合や、直りにくい場合には膀胱炎以外の病気が隠れていることが有ります。泌尿器科専門医の受診をお薦めします。
この病気は皆さん殆ど知らないと思います。普通におしっこが出来るのは、実は”蓄尿”と”排尿”に関係する神経が巧妙に調整してくれているからなのです。脳から膀胱に至る神経経路のどこかで障害を受けると、正常な膀胱機能が維持できなくなってしまうのです。
脳の障害が起きる病気(脳梗塞・脳出血・脳血栓など)、脊髄の病気(頸椎症、交通事故などによる脊髄損傷・椎間板ヘルニアなど)、末梢神経の障害(子宮癌手術後・直腸癌手術後・糖尿病など)など色々有ります。
障害された場所によって、蓄尿障害(尿が近くて我慢できない)や、逆に排尿障害(おしっこの感覚が無い・おしっこが出ずらい)など多彩な症状を認めます。
蓄尿障害の患者さん
膀胱筋肉の過反射による場合には、尿失禁で使用する内服薬を使います。括約筋の緊張低下による場合にも内服薬を試みます。効果が得られない場合には、オムツや集尿器や尿道バルーン留置になってしまいます。
排尿障害の患者さん
軽度の場合には、膀胱筋肉の収縮力をあげる内服薬を投与します。それでも残尿のある場合には、「間欠自己導尿法」を指導いたします。自分で定期的に尿道からカテーテルを挿入して尿を出す方法です。やってみるとかなりの方が簡単に習得できます。高齢な方などでは、尿道バルーン留置になってしまう方もいらっしゃいます。
難治性疾患として知られている原因不明の病気です。「頻尿、尿意切迫感、膀胱痛などの症状があり、その状態を説明できる他の疾患がない」場合に、“間質性膀胱炎“と診断されます。膀胱内視鏡での所見が重要な根拠となります。
男性の場合では、“間質性膀胱炎”と“慢性前立腺炎”の鑑別は困難な事が多いです。
症状を言葉で表現すると“過活動膀胱(OAB)”と“間質性膀胱炎(IC)”は似ていますが、違っている点を上げますと
抗アレルギー薬の一種であるアイピーディの内服で症状が軽快する患者さんもいますが、多くの患者さんでは内服薬での治療は無効です。“膀胱水圧拡張術”という麻酔下で水圧をかけて膀胱を大きくするという手技が行われる事が多いです。